【至央に負ける】

「くっ……!」
上に乗られた時点で私の勝機はほぼ潰えている。
それでも生を諦められなくて、むちゃくちゃに暴れて逃れようとした。
だけどすぐに、片手でやすやすと両手首を拘束されてしまう。
私を嘲笑う唇が耳朶に触れ、その感触にぞっとした。
「ここまで苦しめられたんだ。お前の屈辱に歪む顔を見ながら、殺してやる」
「っ!?」
至央の舌が、微かに湿った音を立てながら私の首筋をなぞり上がる。
ぞわりとした不快感とともに感じたのは、経験したことのない異様な熱だった。
それは混乱して拒もうとする私の意思を無視して、どんどん内側に入ってくる。
(なに、これ……!? やだっ、やだ、やだ、やめて!)
「――このまま、俺の気にまみれて死ね」