【至央登場】

「千年間追い回してた女がこんな猿みてぇなガキだなんて、ガッカリ通り越して殺したくなるな。まあ、どっちにしろ殺すけどよ」
「!?」
残忍極まりない言葉とは裏腹に、降ってきた声は夜露のように美しい印象で鼓膜に響いた。
ぎょっとして振り仰いだ私の視線の先で、眩いばかりの金髪が微風にたなびく。血にまみれたそれが、丁度男が背に負っている満月の色と溶けて、この世の者とは思えない禍々しさを醸していた。
後方に控えているもう一人の男が従者然とした格好をしているのも、また異様さに拍車をかけている。
「よお、やっと会えたな。俺のための女」
「は……?」
「俺は陸至央。お前を殺すために生まれた男だ」
突然の有難くない告白を受けて、私はただただ戸惑うばかり。
固まる私を愉快そうに見下ろし、男――至央は一方的に宣言した。

「逆をいえば、お前が存在するのもこの俺サマのため。っつーわけで、仲良く楽しく殺しあおうぜ」